後立山 白馬鑓ヶ岳 2010年8月28日

所要時間 3:20 駐車場−−3:36 鑓温泉分岐−−4:52 小日向のコル−−5:32 杓子沢−−6:14 鑓温泉−−7:37 稜線−−7:59 白馬鑓ヶ岳 9:21−−10:21 鑓温泉 10:43−−11:09 杓子沢−−11:52 小日向のコル−−12:51 林道−−13:00 猿倉荘−−13:02 駐車場

概要
 猿倉から白馬鑓を日帰り往復。鑓温泉までは残雪期に歩いたことはあるが夏道は初めて。当然ながら全体的には1級の道だが、杓子沢を横断する部分で斜面が崩壊し以前の登山道はガレに埋もれており、その不安定なガレの斜面に臨時の道ができつつある状況。安定した登山道になるにはしばらく時間がかかりそう。その他に問題点は無し。杓子沢の雪渓は20mほど残っていたがアイゼンは不要。午前の早い時間から稜線はガスにい覆われて展望は皆無だった。

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 今週も暑い! この夏は記録的な暑さでお盆を過ぎても全く気温が下がらず、8月上旬と同じではないか。下界で過ごすよりも高山に逃げた方が涼しく過ごせるしクーラーの電気代もかからないので、アルプス級の山に逃げ込むことにする。本当は前穂か西穂でも行こうと考えたが午後から雷雨の可能性が高く、前穂を狙って上高地から入る場合はスタート時刻が遅くなって山頂到着時にはガスが上がって展望が無い可能性が高い。秋になってから狙った方が得策と考え、既に登った山から選択することに。今回は久しぶりに白馬岳でも行ってみようか。雪渓歩きがあってこの時期でも涼しさを楽しめるだろう。

 東京を出て甲府盆地を通過し、北杜市に入ると雷雨地帯に入って激しい雨だ。気温が下がってクーラーを切っても快適になる。以後はクーラーを入れる必要なく登山口まで走れた。塩尻に入ると雨は止んで星空が見えていた。豊科で下道に下りて気温表示を見ると24〜25℃と東京ではしばらく味わったことがない涼しい気温だった。

 猿倉到着は11時少し前。まだ駐車場は空きが目立つが平日でも結構な人数が入っている。明日の準備をしているとアイゼンが見当たらない。夏場はアイゼンの出番はほとんどないので車から降ろしてしまったのだった。数週間前の針ノ木雪渓でもツルツル滑ってアイゼンが無いと特に下りは苦しい状況だったが、白馬大雪渓も同様だろう、いや、季節が進んだ分、氷化が進んでいるだろう。登りはまだマシだが下りはアイゼンが無いとかなりスピードダウンするだろうし体力も使いそうだ。コケれば真っ黒け確実だ。しょうがないのでアイゼンの必要がない白馬鑓に目的地を変更する。標高は白馬とほぼ同じだが、小日向のコルを超える分標高差と距離が増すので時間も体力もかかるがしょうがない。

猿倉荘(帰りに撮影) 林道に出る(帰りに撮影)
鑓温泉分岐 なだらかな登り
この辺は残雪期は雪の下 沢みたいな道

 3時間の仮眠をして軽く朝飯を食い3時半前に出発、当たり前だがこんな時間に歩いている人はいない。林道を歩いて白馬鑓分岐で登山道に入り、真っ暗闇の中を延々と歩き続ける。ここは残雪期に2度歩いたことがあるが、ここから少し上がったところから上部は残雪で夏道は埋もれていたので、夏道の付き方は知らない。残雪期は樹林が埋もれて見晴らしもよく、ショートカットで最短距離でコルへと上がったが今は真っ暗だし森の中で日中も視界は無いだろう。なだらかな斜面を歩き続け、次は左へとルートが変わって斜面のトラバース、そしてやっとコルへと本格的に登っていく。残雪期は谷を一直線に上がったが夏道はジグザグに上がっていく。小さな沢があったので顔や腕を洗う。まだ日差しは無いので気温はさほど高くないはずだが、既に汗が噴出す。帰りが思いやられるなぁ。

小日向のコル付近 小日向のコルから見た鑓温泉

 傾斜が緩んで小日向のコルを通過、今は登山道以外は笹と潅木の藪で、無雪期に小日向山まで行くのは苦労しそうだ。少なくともこの暑さでは藪漕ぎはごめんだ。鞍部を越えてもったいないくらい下ってしまうが仕方ない。以前の夏道はもっと高いところをトラバースしていたが今は廃道化している。残雪期に歩いたときに所々でその廃道が顔を出していたが「路肩崩壊」が激しく、傾斜がきついので毎年雪解け後に整備しなおす手間がかかるので、もっと傾斜が緩くて道が崩れない場所に道を移したのだろう。この藪の中で新しい道を開くのは大変だっただろうし、道のつけ方に文句を言うのは筋違いだろう。この頃になってようやくライト無しで歩ける明るさとなったが、鑓温泉の明かりが煌々と輝いているのが見えた。

下りが終わり水平区間に移る 1856m標高点のある尾根に登る
鑓温泉方面から見た小日向のコルから西の道(筋が見える)

 下りが終わって水平移動になると樹林が切れて背の高い草に囲まれた登山道となる。途中で右手に小さな池があり、その先で小さな沢がいくつか横断しており水場として利用可能だった。登りに変わって尾根を乗り越えて今度は杓子沢に向けて下っていく。ここは残雪期だと傾斜がきつく夏道どおりに行くよりももっと上を越えた方が安全だったが道があれば問題無し。

日ノ出 杓子沢を渡った先の崩壊地
杓子沢に下る 雪渓を横断
ガレを登る この辺はルート上も崩壊進行中

 杓子沢はまだ雪渓が残っており、夏道の橋はたぶん外されたままになっているのだろう。この時期でこの規模で残っていると今年は消失しないまま冬を迎えるのではないだろうか。沢の対岸は大きくガレて以前の夏道は跡形もなくなっていて、今はガレを適当に横断して以前の道が生き残った末端に這い上がるようだ。まだ崩落が収まっていないようで途中からはルートが不明となるが、斜面には赤い頭の板が打ち込んであってそれを目印にガレを横断する。このガレはかなり上部から続いており、しばらくは崩壊が止まらないような。一冬越せば大丈夫かな。雪渓は固く凍ってツルツル滑り、磨り減った靴底ではへっぴり腰で歩くことになった。傾斜が僅かだからいいが、白馬雪渓並の傾斜だったら下れなかったかも? まあ、コケても延々と滑落することはないけど。

砂利の斜面を横断 2つ目の雪渓
2つ目の雪渓を見上げる まだこんなに残雪あり
草付きの斜面を登る 鑓温泉が近い
鑓温泉 鑓温泉のテント場

 その先は夏道がしっかりと続いており、緩い斜面をじわじわと高度を上げていく。再び広くガレた緩斜面が登場したが、登山道はしっかりしていたので昔に崩壊した箇所らしい。ここは前回は雪に埋もれていて分からなかった。その先で雪渓を越え、沢を越えるところで水を補給しておく。2つ目の沢を渡り、沢沿いに登っていくと左手では湯気を立てて温泉が流れ落ちてゆく。ここまで来ると小屋を出発して下山する人とすれ違うようになる。そしてすぐに鑓温泉に到着、平日なのでテントは4張だけ。前回来た時には小屋は分解してあったが今は立派な建物が存在している。当初はここで休憩しようかと思ったが、もう少し標高が上がったところで休憩することにしてノンストップで小屋は通過する。

 この先のルートは歩いたことがなく、夏道の付き方を知らない。冬ルートだと湯ノ入沢を詰めていくようだが、そこは雪渓が残って私の靴では滑って登れそうにない。もし夏道も途中まで雪渓を利用するようでは白馬鑓は登れないが、どんなルートだろうか。エアリアマップを見ると沢には下らずに左岸をへつるように進み、途中で右手の尾根に取り付くようだ。

小屋を通過し登る 沢沿いから外れて登り続ける
烏帽子岩 鎖場を通過する登山者

 小屋を過ぎると左岸の高い位置に点々と登山者が見えている。当然、さっき鑓温泉を出発した人だろう。よかったぁ、雪渓歩きはないようだ。既に歩き始めて3時間、そろそろ疲れも出てきた頃だが、普通のペースで歩いているにも関わらず小屋泊まりの人を次々と追い越すことになった。この先は鎖場があってガクッとペースが落ちることも影響しているだろうが。数箇所の鎖場を通過するとナナカマドが中心の低木に覆われた尾根に乗り、先には人の姿が無かった。まさか先頭??

まだ標高2300mくらいなのに森林限界を超える
緩やかな尾根を登る 稜線にガスがかかり始める

 適度な傾斜の展望が開けた尾根で、稜線も良く見えている。下界を振り返ると雲が多いが雲海だろうから稜線まで上がれば大展望だろう。青空に岩稜が映え、アルプスらしい光景が広がる。まだ時刻は7時でこの分なら8時半くらいに山頂に立てそうだった。その時刻ならまだガスが上がってくることは無いだろうと予想していたが、期待を裏切って稜線に薄いガスがかかるようになってしまった。このまま濃くなるのか、それとも一時的な現象で晴れてくれるのか・・・・。山頂で何も見えなかったらヤダなぁ。

 そろそろ休もうかと高度計を見つつ進み、残りの標高差が400mになったら休憩に入ることにする。途中でGPSの電源を入れて高度は校正したが、再び電源を入れて標高を確認すると既に2600mを越えているではないか! 残りの標高差は約250m、40分程度で山頂に到着できる計算だ。結構疲れて休みたかったが、この程度の残り時間で休憩して山頂で再び休憩というのも間が抜けているのでこのまま山頂まで頑張ってみよう。既に歩き始めて4時間近いが、これほど無休憩で歩いた経験はないかもしれない。先週の早月尾根でも3時間だったしなぁ。

主稜線向けて最後の登り 稜線に到達
天狗ノ頭方面 2750m峰
中背山へと続く尾根

 稜線のガスはまだ薄いままで期待が持てそうだった。もう少しで稜線というところで下ってくる男性とすれ違う。標高2700mで進路を右に変えて登りきると主稜線に到着、時々ガスが流れるがまだどうにか展望はある。しかし東側は空気の透明度が悪く戸隠がかろうじて見えるだけで志賀高原は全く見えない。南側は天狗の頭が高いためまだ山並みは見ることができない。西側は一面の雲に覆われて劒岳北方稜線の山は見えなかった。どうにか清水尾根が顔を出しているだけだった。さて、山頂に到着する頃はどうなることやら。

鞍部からの登り 白い山肌が続く

 2750m峰西側を巻き、鞍部から最後の登りにかかる頃には山頂は濃いガスに包まれるようになってしまった。その中を何人もの登山者が降りてくるのが見える。この付近の山肌は真っ白で独特の風景だ。晴れていれば素晴らしいのだろうに。ガスって日差しがなく、少し風があってTシャツでは寒いので腕カバーを装着する。これで登りだと微妙に寒い程度だが下りだと完全に寒さを感じるくらいだろう、下ってくる人は皆長袖やゴアを着ていた。

縦走路から山頂へ分岐 白馬槍ヶ岳山頂。この頃にはガスの中

 中背山へと落ちる西尾根に上がると山頂への分岐標識があり、縦走路は山頂を通らずに巻いてしまうようだ。この辺の記憶は全く無い。ガスの中、山頂方向に向かうと三角点のような標石がある場所があったが三角点ぽくない。その先のなだらかな尾根を進むと今度こそ本物の三角点登場、根元まで出てしまってグラグラしている。その傍らには文字が消えた柱があったが山頂標識らしからぬ姿で傾いていた。表面を見るとかろうじて文字を読むことができ山頂標識であることが確認できたが、後立山でよく見る黄色い標柱と比較してやたら巨大だった。もっと古い時代に設置された物かもしれない。

 山頂では奥のほうで1名だけ休憩中。その後はポツポツと登ってくるがガスって展望が無いこともあって写真だけ撮影して下っていく人も多かった。山頂でのんびり休憩していた人の中では長靴を履いたジモティーのおじいさんが混じっていた。大雪渓も長靴で登ってきたそうで、おそらくはベテランなのだろう。残雪期は長靴姿のジモティーは良く見るが夏場は初めてかもしれない。神戸から来たというカップルもいたが遠いところからご苦労様。日本海廻りで電車で入り、栂池から登って昨日は村営小屋で幕営、今日はのんびりと鑓温泉までだとのこと。今朝は6時くらいは快晴で大展望だったそうだ。私が到着したのは8時だが、その2時間前に白馬鑓山頂に到着するには先週と同じく夜中1時半に出発する必要があり睡眠時間がなくなってしまう。まあ、今回は展望は諦めよう。時々日が差すのだがガスが晴れるのは頭上だけで周囲は霧に包まれたままだった。

 出発前は軽くしか食事を取っていなかったし、4時間半も歩き続けたので最後は相当腹が減っていたので到着早々腹ごしらえと給水。ちょっとやそっとでは疲労は回復しないかと思ったが、ザックを寝かせて僅かな時間だが眠ったことが良かったのか、下山開始時には意外に元気になっていた。晴れて展望がよければもっと元気だったかもしれないが。

鑓温泉再び 鑓温泉源泉。岩から噴き出している

 下りも快調に飛ばして次々と下りの人を追い越して鑓温泉に到着。少々休憩して軽く腹ごしらえする。ここには無料の足湯があって何人もの登山者が休憩していた。汗をたくさんかいたので温泉に入りたい気分だが、まだまだこの先歩く距離も長く登り返しもあって汗だくになるのは確実なので、お湯に手を浸すだけで出発した。ここに浸かるのは雪がある時期かな。

小日向山のコル 小日向山のコルにある池
小日向山 白馬岳も雲の中

 帰りの時間帯は2箇所の雪渓とも早朝と違って雪が緩んでほとんど滑らなかった。朝方の感触ではほとんど氷だと思っていたが気温が上がるとちゃんと雪らしくなっていた。これだったら杓子を回って大雪渓を下ったほうが良かったかもしれない。小日向のコルへの登りは汗まみれ、濡れタオルで頻繁に汗を拭う。下りに変わってやっと重労働から開放され、小さな沢でタオルの汗を洗い流し顔や腕を洗ってさっぱりする。この先は樹林に入って日陰にはなるが標高が落ちて気温が上がり、やっぱり汗まみれになる。途中、沢が2箇所くらいあったように記憶していたがそんなものは現れないまま林道に飛び出した。残念ながら沢で水浴びはできず、車に積んだ水で汗を洗い流すしかなさそうだ。

鑓温泉分岐 登山者用駐車場

 猿倉荘を経由して駐車場に到着。お昼過ぎで下山した人も多く駐車場にはまだ空きがあった。この頃には猿倉上空も雲に覆われるようになり日差しが遮られ、車の中で気持ちよく昼寝できた。

 

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